2018年上半期ベスト映画

1:ショーン・ベイカー『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』 最も誠実に子供と女性と男性を描いた作品。人間の生存に関わる「なぜ?」と「私は私である」を巡る根拠の物語であり、鮮烈なラストの後ろ姿に一抹の夢と希望を託したくなる寓話である。2:ス…

フェミニストについて私が知っている二、三の事柄

わかった、わかった、フェミニストという言葉が嫌いなのは。そんなことは承知で書いているのだ。現代におけるフェミニズムは罵倒や脅しの枕詞に近い存在のようにすら感じる。 「あいつはフェミニストだから云々」「あいつはフェミニストのくせに云々」。フェ…

2017年ベスト映画

今年も映画を見て、ああでもないこうでもないと終わりのない煩悶を繰り返しながら好きな映画を選びました。1:湯浅政明『夜明け告げるルーのうた 』 初めて見た時から心のざわつきが少しも薄れず、何度も何度もルーがいる世界を想像する。 そこには荒唐無稽…

2017年上半期ベスト映画

2017年上半期ベスト映画1:『夜明け告げるルーのうた』湯浅政明 1:『夜は短し歩けよ乙女』湯浅政明 湯浅政明の才覚が全く別のベクトルで炸裂した2つの傑作。年間ベストではなく、オールタイムベストとして記憶したい。 湯浅政明の天才はあらゆるものを呑…

『映画なしでは生きられない』真魚八重子

真魚八重子『映画なしでは生きられない』は純然たる「映画批評」であり、そうであるがゆえに1つの藝術として屹立している。 敢えて断言し、唐突に引用する。『映画なしでは生きられない』は個人体験の敷衍による安易な共感を斥け、ただそこに在ることを肯定…

映画通とアフォリズム

なんだか最近また話題になってる記事です。 記事が出た当時も怒っていた気がします。全方位に誤解を生む、心底どうでもいい内容なんですが、別ジャンルに置き換えると自分もそんな愚劣な振る舞いをしたことがあるのかもしれません。だからこそ、普段映画を見…

『君が生きた証』呪われた藝術に関する雑考

この世に呪われた藝術など存在するのか? この問いが提示する「呪われた」とは、「世間に発表すること」「創造者以外の人間の目に、耳に、感覚に触れること」を意味するという前提が許されるとすれば、答えは明白である。 「焚書」は世界中のあらゆる地域・…

2014年ベスト映画

年の瀬ですので、長文ですが、隙間時間にでも。次点 『ダラス・バイヤーズクラブ』 『スガラムルディの魔女』 『トム・アット・ザ・ファーム』 『やさしい人』 『メビウス』 『百円の恋』 『フランシス・ハ』 『アデル、ブルーは熱い色』 『プリズナーズ』 …

『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』 螺旋型の浮上への永遠の停滞

無性に自らの人生を否定したくなることがある。 それが故なきことだと知っていながらも、自らの境遇を嘆き、他者を羨み、悪態をつき、そんな自分を肯定してくれる人ですら傷付け、それが自らを傷付け、延々と堕落していく他ない循環を巡る。 完全に閉じて、…

『はちみつ色のユン』と『隣る人』

『はちみつ色のユン』は、時代や現実の要請によって、血の繋がった両親との生活を断絶された子供が、血の繋がりがないはずの他人と真の親子になってゆく過程を描いた物語である。 親子とはなんなのか、親と子という関係性を定義するものはなんなのか、そんな…

『プリズナーズ』

『羊たちの沈黙』を超える云々、『セブン』を超えた云々、日本の映画宣伝はミステリーの傑作を打ち出す際にそんな惹句をよく使う。 もちろんこの二本が映画界に与えた衝撃、影響を軽んじるつもりはない。今見ても全く色褪せることなく不穏な、不謹慎な輝きを…

『ザ・フューチャー』と『ばしゃ馬さんとビッグマウス』〜映画における「35歳問題」〜

映画における「35歳問題」は非常に根深い。 この話をするためには、まずその前提となるティーンの問題を避けて通れないのだ。 映画には、ジョン・ヒューズの一連の作品を嚆矢とするアメリカ学園モノというジャンルがある。 アメリカの高校生は、ティーンとい…

『ヒミズ』ー苦々しくも誠実な希望

園子温監督最新作『ヒミズ』を観た。 どこから書けばいいのだろうか。何か落とし処を決めて書くわけではない。断片的にこの映画から想起されたことを書き連ねるだけになってしまうかもしれない。意図せざる結論に至ってしまうかもしれない。それでも、この映…

今年の映画、今年のうちに〜2011〜

早いもので2011年ももう終わろうとしているわけで、相も変わらず実家の炬燵で一日中ぬくぬくしていると、今年を振り返ってみたくなるもので、今年観た映画にことでも書いて今年の総括でもしてみることに。 映画の感想とかランキングを書くという行為の気恥ず…

Allez vous faire foutre

ジャン=リュック・ゴダールの処女作たる『勝手にしやがれ』(原題『息切れ』)での冒頭ワンシーン。 ジャン=ピエール・ベルモンド扮する主人公ミシェル・ポワカールが盗んだ車でハイウェイを疾走しながら、突然カメラに向かって毒づく。「もし海が嫌いなら…